父 望が医師をめざすと決めた時は嬉しかったよ。だから、僕自身が卒業した川崎医科大学附属高校を勧めたんだ。高校時代に受けた教育はもちろん、寮生活や部活動も、僕が医師になるにあたっての基礎となっているからね。特に寮生活は同じ道をめざす仲間との絆も深まるし、経験しておくべきだと思ったよ。
息子 お父さんの背中をずっと見ていたから、中学受験をきっかけに将来のことを考えた時に、医師をめざそうと思った。それに小さい頃からよくお父さんが附属高校の話をしてくれたから、進学を勧めてくれて、ぜひ行きたいと思ったんだ。
父 中学生の頃は試験前に体調を崩すこともよくあったし、これまでお母さんがしていた身のまわりの世話を自分でできるのか、親としては少し心配もあったけれどね。
息子 初めての寮生活は不安もあったけれど、先輩や同学年の友人になんでも聞けるし大丈夫。医科大学の附属高校だから勉強ばかりするのかと思っていたけれど、バスケットボールや音楽も楽しんでいるよ。月曜から金曜まで夜間一斉学習があるから、勉強にも集中して取り組めるし。一人だと途中で気が緩んでしまいがちだけど、まわりのみんなが真剣に勉強しているから、僕も頑張らなきゃ、と気合いが入るんだ。毎日の学習習慣がきっちり身に着いたよ。
父 寮では生活面の自己管理も必要になってくるから、メンタルも強くなってきたんじゃないかな。バスケットボール部の対外試合ではフルタイム出場したっていうから、体力も着実についてきているようだね。患者さんを診る医師にとって、体力があることは大切だ。入学してから全体的にレベルアップして成長したように感じるよ。
息子 ドクターロードという授業で、医大の先生が医師のあり方について話をされた時に、医師は人を救うことができる数少ない職業だということを再認識したんだ。人の命に関わる医師になるということは大変なことなんだ、と。これまで何気なく一緒に過ごしてきたお父さんが、そんな尊い職業についていると思うと、改めて尊敬の念が湧いてきて……。お父さんは病院が休日でも、患者さんの調子が悪くなるとすぐに駆けつけて、いつも患者さんを最優先に考えていたから。地域の皆さんに信頼されている姿をかっこいいと思っていた。お父さんを見ていると自分の職業に誇りを持っていることがすごくよく分かる。だから、自分もお父さんのように誇りを持って医療に携わる医師になりたい。
父 医療現場では、特に人と人との信頼関係は大切なんだ。望にも、相手を思いやる気持ちを大切に、常に患者さんの立場になって考えられる医師になってほしい。うちは先祖代々医師の家系で望が15代目だ。できればこの医院の後を継いで地域医療に貢献してほしいと思っているよ。
息子 何科の医師になりたいのかはまだ考えていないけれど、ただ病気を診断して治すだけではなく、親身になって患者さんの気持ちを理解できる人間味にあふれた医師になりたい。これはきっと、お父さんの影響だね。