息子 お父さんの医師という仕事を引き継ぐのもいい夢。そういう風に思い始めたのは中学の時。でも、生半可な力量ではなれないと悩んでいたら、川崎医科大学附属高校を勧めてくれたんだ。
父 なかなか目標が定まらず、集中できていなかったみたいだから、目に見える具体的な目標があればと思ってね。それからずいぶんがんばったよね。
息子 あの頃は、失敗したら取り替えしがつかないと思っていたんだ。子どもの時から、お父さんと地域の患者さんの信頼関係を見てきて、僕もそういう医師になりたいという気持ちになっていたから。
父 病院を継いでもいいよと言ってくれた時は、すごく嬉しかったし、頼もしいと思ったよ。
息子 まだ大学に入ってもいないから、自分の興味のある方向に行くかもしれないけど。
父 もちろん、いろんなことを勉強してからだね。ところで、家にいた時は身の回りのことも何もしていなかったけど、寮生活はどう?
息子 家ではお母さんが全部やってくれていたけど、寮では自分でやらないと誰もやってくれないから、基本的な生活習慣は身に付いたと。
父 寮生活のおかげで、人間力もちゃんと成長しているみたいだね。生徒数がすごく少ないから、先生や友達との距離は近いのかな?
息子 友達は入学当初から一致団結していて楽しいし、勉強を教え合ったり、励まし合ったりしてる。それに、試験中とかみんなの部屋の電気が点いているのを見ると、眠たくてももう少しがんばってみようという気持ちになる。先生との距離も近くて、すごく話しやすいんだ。こういう部分は、この学校のいいところのひとつだと思う。
父 今年は3年生だけど、授業の方はどうだい?
息子 ドクターロードという授業がすごく印象に残っている。中でも、衝撃を受けたのが、現代医学教育博物館の医療関係者向けフロアの見学。ここに何人の命があるんだろうと思って、命への畏敬の念と医学の重さを痛感したんだ。もうひとつは旭川荘での研修。すべての人に同じ権利があって、すべての人が平等だということを学ぶと、それまで以上に患者さんへの配慮がとても重要だと考えるようになった。
父 そうだね、患者さんの気持ちに共感することが一番大事。疾患を診るだけでなく、その背景までみることで、本当に心を開いてくれるし、そうすると診療も非常にスムーズになる。
息子 細やかな配慮を大切にして、怖い顔ではなく、明るい表情で、安心してもらえる医師になりたい。
父 大雅は子どもの頃から優しかったから、患者さんの気持ちに共感して、地域に根ざしていけばきっと大丈夫。
息子 その前に、医科大学への進学、その先の医師国家試験という長い道のりが待っているけどね。
父 芯の強さと柔軟性で、トライしていくことを期待しているよ。