父 静香が、小さなころから医師志望だったことは知っていたけど、医師を目指すために高校を選ぶなんて、考えもしなかったよ。
娘 病院の医師として、地域の人のために頑張るお父さんの背中を見て育ったから。お母さんも医師だし、運命みたいなものを感じていたの。医師になるなら早い時期にベストの選択をしたかったから。
父 そのお母さんが川崎医科大学出身。その縁もあったんだよね。
娘 中学校で学校案内のパンフレットを見たのが最初のきっかけ。全国で唯一の医科大学附属高校で、医学部への進学率が90%以上。この高校に行きたいと思ったんだ。それでお母さんに相談して。
父 お母さんのネットワークを通じて、いい高校だとは認識していたけど。親元を離れての全寮制だろ。内心ではそれが心配だった。「やっていけるのかな」って。
娘 私もそれが不安だった。だけど入学式前日の入寮のときから、皆がフレンドリーで、優しくて。
父 最初がうまくいけば、と思っていたから、入学して1カ月たってもすごく元気そうだった。もう大丈夫だなって安心したよ。
娘 学びはもちろんだけど、高校の特長は、やはり少人数での寮生活。「裸の付き合い」というか、親密度がすごい。同じ目標を持っているし、医療関係の家庭の人が多いから、デリケートなことも、細かなニュアンスも分かり合えるんだ。
父 そして将来、寮の仲間たちは医師として全国各地、世界各国で活躍する。とても心強いネットワークだね。
娘 一番大きなことは、仲間たちに刺激されてよく勉強するようになったこと。友人の中には、ただ医師になるというだけでなく「〇〇科の専門医師」になるというしっかりとした希望を持っている人もいて、勉強に対する心構えが違う。私も頑張らなくちゃという気持ちになるよ。
父 切磋琢磨。仲間同士が互いに励まし合い、競争し合って、共に向上しているんだね。そんな環境は、地元の、普通の高校には絶対にないことだ。静香はとても恵まれていると思う。
娘 ドクターロードという授業で、お母さんと同じ「血液内科」の臨床の先生にインタビューをしたの。その先生が、患者さんの生命に関わる仕事の大切さを話してくれて。そのとき思い出したのが、白石医院の待合室に掲げてある、何枚もの感謝状。お父さんが地域の保育園や学校からいただいたんだよね。「私も地域に密着して、地域の方に信頼される臨床医になりたい」と改めて思った。背中を見て育ったけど、今は医師として働くお父さんやお母さんの姿を、正面から見つめている気がする。
父 …。なんだか一人の人間として成長している気がするなあ。普通だったら大学で養う、医師としての心構えや覚悟が出来つつあるような。その初心を忘れずに、まずは医科大学に入学してください。
娘 はい。この高校で、切磋琢磨して、頑張ります。