父 「医師になれ」とは一度も言ってないのに、好花から「医師になりたい」と言われたときはびっくりした。しかも、お父さんの母校に入りたいなんて、全く予想していなかったよ。
娘 高校時代のことをよく話してくれていたから。岡山という土地や寮生活にも興味がわいて、医師をめざすならこの高校に入りたいと思ったの。大学に進めば、お母さんの後輩にもなれるし。
母 小さい頃からピアノとバスケに夢中で、将来は自分の好きな道に進んでくれたらと思っていたけれど、小学校の「2分の1成人式」※でスポーツドクターになりたいという夢を発表したよね。
娘 「自分も医師をめざすのかな」と漠然とは思っていたけれど、東日本大震災の影響も大きいかな。ニュースで医師不足が話題になっていて、「だったら、私がなろう」と思ったんだよね。
父 高校に入って最初の印象はどうだった?中学までは地元の公立だったので、雰囲気がかなり違ったと思うけど。
娘 そうだね。生徒数は少ないけれど、みんな個性的で目標をしっかり持っているので、「自分も負けられない」という気持ちが強くなり、逆にホームシックになる余裕がなくて良かったかも。
母 私が心配だったのは、寮生活のこと。これまで掃除や洗濯などの家事をあまり手伝わせてこなかったから。
娘 自分でも不安だったけれど、何とかなるものだね。寮には指導してくれる先生もいるし、今は大丈夫。自立できているよ。
母 この高校に入って良かったのは、どんなこと?
娘 一番良かったのは、同じ目標を持つ友達が全国にできたことかな。地元の高校では絶対経験できないことだと思う。勉強は大変だけれど、面白い先生が多くて、大好きなバスケやピアノも続けていけるし、毎日が充実していて本当に楽しいよ。
父 この学校にはドクターロードという授業もあるけれど、「こんな医師になりたい」というイメージが少しずつできてきた?
娘 具体的にはこれからだけれど、どの専門分野に進んでも信頼される医師をめざしていきたいとは考えているよ。
父 一度「お父さんの病院を継ごうかな」と言ってくれたことがあったけれど、大学でいろいろ学んだ中で、最も興味を持った分野に進むのが一番だからね。ゆっくり考えていけばいいよ。
母 私は卒業後すぐに研究分野へ進んだので、好花にはいろいろな分やの臨床を経験し、できるだけ幅広く活躍できる医師になってほしいね。子どものころの夢だったスポーツドクターとか。
娘 そのためには、まず医科大学に進まないとね。
※ 小学校で行われた、10歳時(成人の半分の年齢時)に将来の夢を語るイベント。